丸のみしてるかも…?と気になったら⚡

- 子どもの「噛む力」をやさしく考える -

11月8日は「いい歯の日」。

歯の健康というと、むし歯予防を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、歯や口には、食べものを噛み、飲み込むという大切な役割もあります。

子どもの食事を見ていて、

「今の、ちゃんと噛んでいたかな?」
「ほとんど口を動かさずに飲み込んでいるかも」
「いつまでも口の中に食べものが残っている……」

そんなふうに感じたことはありませんか?

厚生労働省の2015年の「乳幼児栄養調査」では、離乳食について困っていることとして、「もぐもぐ、かみかみが少ない(丸のみしている)」と回答した保護者が28.9% にのぼりました。[1]

子どもの「噛む力」は、歯が生えれば自然に完成するものではありません。舌や唇、あごを動かし、さまざまな食べものを口の中で処理する経験を重ねながら、少しずつ育っていきます。

今回は、噛む力の発達を知り、気になる食べ方の背景を考えながら、家庭で試せる工夫を一緒に探していけたらなと思います。

この記事でわかること💡

① 子どもの「噛む力」はどう育つ?

② 気になる3つの食べ方から考えられること

③ 食べ方に合わせて、家庭でできる工夫

① 子どもの「噛む力」はどう育つ?

「噛む」という動作には、歯だけでなく、舌・唇・頬・あごなど、口のさまざまな部分が関わっています。
離乳食が始まる頃から、子どもは食べものを取り込み、つぶし、飲み込む動きを少しずつ身につけていきます。

発達の流れを見てみましょう。[2]

▪️ ゴックン期(生後5〜6か月頃)

離乳初期は、なめらかにすりつぶした食べものを飲み込むことから始まります。
舌を前後に動かして食べものを口の奥へ送り、唇を閉じて飲み込む動きを覚えていく時期です。

▪️ モグモグ期(生後7〜8か月頃)

離乳中期になると、舌を上下に動かし、食べものを舌と上あごで押しつぶせるようになっていきます。
口を閉じたまま、あごが上下に動く様子が見られるようになります。

▪️ カミカミ期(生後9〜11か月頃)

離乳後期には、舌を左右にも動かし、食べものを歯ぐきの上へ運んでつぶせるようになっていきます。
あごを動かしながら食べるときに、頬や口角に左右差が見られることもあります。

▪️ 離乳完了期(生後12〜18か月頃)

前歯で食べものをかじり取る経験が増え、舌やあごの動きもさらに発達していきます。
ただし、この時期に大人と同じように噛めるようになるわけではありません。奥歯の生え方なども関係しながら、噛む機能はその後も発達していきます。

月齢はあくまで目安です。

また、口元の動きは発達を考えるヒントになりますが、見た目だけで十分に噛めているかを判断できるわけではありません。

大切なのは、月齢だけに合わせて食材を変えるのではなく、今、その子がどのように口を動かして食べているかにも目を向けることです。

② 気になる3つの食べ方から考えられること

子どもの食べ方を観察していると、気になる様子が見つかることがあります。

けれど、同じように見える食べ方でも、その背景は一つとは限りません。

ここでは、家庭でよく見られる3つの食べ方を例に、どのようなことが考えられるのかを整理してみます。[2][3]

1. あまり噛まずに、ゴクンと飲み込む

ごはんやうどんなどを、口の中であまり動かさず、そのまま飲み込んでいるように見えることがあります。
このようなときは、食材のかたさ・大きさ・まとまり方が、子どもの食べる力に合っているかを考えてみましょう。

例えば、やわらかすぎたり、細かすぎたりする食材は、十分につぶす動きをしないまま飲み込める場合があります。

一方、かたすぎる食材では、うまく噛みつぶせずに飲み込もうとしたり、えずいたり、口から出したりすることもあります。

「噛まない=もっとかたいものを与える」ではないということです。

食材の状態と、口の動きを合わせて考える必要があります。

2. いつまでも口に残る・口から出してしまう

ひき肉のように細かくばらける食材は、口の中で一つにまとめにくいことがあります。
また、肉や野菜の繊維が残っていると、うまく噛み切れず、いつまでも口に残ってしまう場合もあります。

その結果、飲み込めずに口から出すことも考えられます。

このようなときは、食材のかたさだけでなく、まとまりやすさや繊維の残り方にも注目してみましょう。

3. 口いっぱいに詰め込んでしまう

次々と食べものを口に運んだり、まだ口の中に残っているのに、次のひと口を欲しがったりすることがあります。

自分で食べたいという気持ちが強い場合もあれば、ひと口量の調整や、食べるペースがまだ難しい場合もあります。

食べものの大きさや量だけでなく、次のひと口を口に運ぶタイミングにも目を向けてみましょう。

ここで紹介したものは、あくまで考えられる可能性です。

一つの食べ方から原因を決めつけず、「どんな食材のときに起こりやすいか」「食材が変わると口の動きも変わるか」など、いくつかの視点を持つことが大切です。

③ 食べ方に合わせて、家庭でできる工夫

気になる食べ方が見られたとき、家庭ではどのようなことを試せるのでしょうか。

ここでは、食材の特徴や食べる様子に合わせた、具体的な工夫を紹介します。

1. 食材のかたさ・大きさ・まとまり方を見直す

例えば、ごはんをあまり噛まずに飲み込むとき。

今のごはんは、やわらかすぎないか。反対に、かたくてつぶしにくくなっていないか。水分量やまとまり方はどうか。

まずは、その状態を確かめてみましょう。

うどんであれば、麺の長さやかたさ、汁気の量なども確認するポイントになります。
同じ食材でも、調理によって口の中での扱いやすさは変わります。

いきなりかたくするのではなく、今の食べ方に合わせて、状態を少し調整することから始めてみましょう。

2. まとまりにくい食材には、とろみを活用する

ひき肉のように細かくばらけやすい食材は、そのままでは口の中でまとめにくい場合があります。

そんなときは、少量のとろみをつけたり、やわらかく煮た野菜と組み合わせたりする方法があります。
ブロッコリーなども、十分にやわらかく調理し、食べやすい大きさに整えることで、口の中で扱いやすくなることがあります。

ただし、とろみをつければ必ず食べやすくなるわけではありません。子どもの様子を見ながら調整しましょう。

3. 繊維のある食材は、切り方と加熱方法を工夫する

肉や野菜は、やわらかく調理したつもりでも、繊維が残って噛み切りにくいことがあります。

例えば、繊維の長い肉は、繊維を断つ方向に切ることで、噛み切りやすくなる場合があります。
野菜も、筋の残り方や切り方に目を向け、必要に応じて小さく切ったり、十分にやわらかく煮たりしてみましょう。

大切なのは、単に細かくすることではなく、子どもが口の中でつぶし、まとめて飲み込める状態にすることです。

4. ひと口量と、食べるペースを整える

口いっぱいに詰め込む場合は、一度に口へ運ぶ量を少なめにしてみましょう。

大人が食べさせるときは、口の中の食べものがなくなったことを確認してから、次のひと口を用意します。
自分で食べたい子もいれば、食べものを手に持っていても、大人に渡して食べさせてほしがる子もいます。

手づかみ食べにこだわりすぎず、その子の食べたい気持ちや発達に合わせて、食事を進めていきたいですね。

工夫は、一度に全部変えなくても大丈夫

例えば、ごはんの丸のみが気になったときに、かたさ・大きさ・ひと口量をすべて同時に変えると、どの工夫が食べ方の変化につながったのか、わかりにくくなってしまいます。

まずは一つ調整し、その後の口の動きや飲み込み方を見てみましょう。

変化がなければ、別の視点から考えてみる。
そんな小さな試行錯誤も、子どもの食べ方を知るための大切な手がかりになります。

※食事中に繰り返しむせる、咳き込む、飲み込みにくそうにする、食事量や体重の増加に影響が出ているなど、心配な様子がある場合は、家庭での調整だけで対応しようとせず、小児科や小児歯科などの専門家に相談しましょう。

おわりに|気になる食べ方を、次の工夫につなげよう

子どもの「噛む力」は、一度に身につくものではありません。

舌や唇、あごを動かし、さまざまな食べものを経験しながら、少しずつ育っていきます。
食べ方が気になるときも、すぐに「噛めていない」と判断する必要はありません。

どんな食材を、どんなふうに食べているのか。

そこから考えてみることで、今までとは違う工夫が見つかるかもしれません。

この4つを繰り返しながら、今の子どもに合う食べ方を一緒に探していく。
昨日はうまくいったことが、今日は思うようにいかない日もあるかもしれません。

それでも、毎日の食事の中で見つけた小さな気づきは、次の工夫を考える大切な手がかりになります。

「もっと噛ませなきゃ」ではなく、「今の食べ方には、どんな工夫が必要なのかな?」

そんな視点を、明日のごはん時間に一つ加えてみませんか。

参考文献

[1] 厚生労働省.「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」第1部 乳幼児の栄養方法や食事に関する状況.2016年.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000134207.pdf

[2] 厚生労働省.「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」.2019年.
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/junyuu

[3] 京都市.「離乳食お悩みQ&A集」.発行年不明.2026年11月3日閲覧.
https://kyo-kenko.city.kyoto.lg.jp/eatinghabits/infancy/babyfood-faq/