焼きいもは、なぜ甘い?🍠
〜さつまいもの甘さの秘密と、子どもの食卓に生かす調理の工夫〜
秋になると、スーパーの店先から漂ってくる焼きいもの甘い香り。
その香りに誘われて、思わず足を止めたことはありませんか?
ほくほくとした食感や、ねっとりとした濃厚な甘さ。砂糖を加えていないのに、どうして焼きいもはあんなにも甘くなるのでしょうか。
実は、その秘密はさつまいもに含まれる「酵素」と「加熱の仕方」にあります。
10月13日は「さつまいもの日」[1]。
今回は、焼きいもの甘さの秘密をひも解きながら、素材の甘みを生かす調理の工夫や、子どもの成長を支える栄養についてご紹介します。
第1章|焼きいもの甘さの秘密は「でんぷん」と「酵素」
さつまいもには、もともと「でんぷん」が多く含まれています。
実は、さつまいもの中には、このでんぷんを甘みのある糖に変える「酵素」も含まれているのです。
さつまいもを加熱すると、でんぷんが熱と水分によって変化し、酵素が働きやすい状態になります。すると、でんぷんの一部が「麦芽糖(ばくがとう)」という糖に変わり、甘みが増していきます。
この働きに関わっているのが、「β-アミラーゼ」という酵素です[2]。
ただし、この酵素は温度が高くなりすぎると働きを失ってしまいます。そのため、さつまいもの甘みを引き出すには、酵素が働きやすい温度帯をゆっくり通過するように加熱することがポイントになります。
また、でんぷんが変化し始める温度や酵素の働き方は、さつまいもの品種によっても異なります[3]。
焼きいもが甘く仕上がる理由の一つは、この加熱の仕方にあるのです。
では、家庭ではどのように加熱すれば、さつまいもの甘みを上手に引き出せるのでしょうか。
第2章|甘さを引き出す、さつまいもの調理のコツ
さつまいもの甘みを引き出すポイントは、酵素が働く時間を確保することです。
そのためには、さつまいもの内部の温度が急激に上がらず、でんぷんが糖に変わりやすい温度帯をゆっくり通過するように加熱します。
この仕組みを、家庭での調理にどのように生かせるのでしょうか。
① 焼く|じっくり加熱して甘みを引き出す
焼きいもは、さつまいもの甘みを引き出す調理方法の一つです。
オーブンでは、さつまいもを丸ごとじっくり加熱することで、甘みを引き出しやすくなります。
例えば、直径5cm程度のさつまいもを洗ってアルミホイルで包み、予熱なしのオーブンで160℃、90分を目安に加熱します。竹串が中心まで抵抗なく通ることが、焼き上がりの目安です[4]。
トースターでも焼きいもを作れます。アルミホイルを敷いた天板にさつまいもをのせ、途中で裏返しながらじっくり焼きます。表面の焦げや乾燥が気になる場合には、アルミホイルで包む方法もあります。加熱条件は機種の取扱説明書を確認しましょう。
丸ごと時間をかけて焼くことで、中心部の温度が比較的ゆっくり上がり、酵素が働く時間を確保しやすくなります。
② ゆでる・煮る|甘みを引き出す工夫を料理に生かす
ゆでる場合も、さつまいもの内部にゆっくり熱を伝えることが、甘みを引き出すための工夫になります。
例えば、さつまいもを丸ごと、または大きめに切って鍋に入れ、浸る程度の水を加えます。水から弱火で穏やかに加熱し、竹串が中心まで抵抗なく通るまで火を通しましょう。
大きめに切ると中心まで熱が伝わるのに時間がかかるため、酵素が働く温度帯をゆっくり通過しやすくなります。ただし、この方法で必ず甘みが強くなるわけではなく、品種や加熱条件によっても仕上がりは変わります。
この考え方は、ほかの食材と組み合わせる料理にも応用できます。
例えば、みそ汁では、さつまいもをほかの野菜と一緒に水やだしから穏やかに加熱することで、甘みを引き出す工夫を取り入れられます。
一方、玉ねぎを炒めてから煮込むポタージュでは、さつまいもを先にじっくり加熱し、炒めた玉ねぎと合わせる方法もあります。
さつまいもを先に炒めたり焼いたりする場合も、短時間で焼き色をつけるだけでは、酵素による甘みを十分に引き出せるとは限りません。
大切なのは、単に加熱する順番を変えることではなく、さつまいもにどのように熱を伝えるかを考えることです。
③ 電子レンジ|出力を工夫して甘みを引き出す
電子レンジは、さつまいもを手軽に加熱できる便利な調理器具です。
ただし、高い出力で一気に加熱すると、酵素が働く時間が短くなり、じっくり焼いた場合ほど甘みが引き出されないことがあります。
甘みを重視する場合には、低い出力で時間をかけて加熱する方法があります。
例えば、洗ったさつまいもを電子レンジ対応の湿らせたキッチンペーパーで包み、さらにラップで覆って、200Wで加熱する方法です。まず10分程度を目安に加熱し、竹串で中心のやわらかさを確認します。まだ硬い場合は、様子を見ながら追加で加熱しましょう[5]。
必要な時間は、さつまいもの大きさや機種によって異なります。中心まで十分に火が通っていることを確認してください。
甘みを引き出す知識を、毎日の食卓へ
さつまいもの甘みを引き出したいときには、酵素が働く時間を確保できるよう、加熱の仕方を工夫することが大切です。
じっくり焼く、水から穏やかに煮る、ほかの食材と合わせる前に加熱する、電子レンジの出力を調整するなど、その方法は料理によって異なります。
甘みが生まれる仕組みを知り、それぞれの料理に合った加熱方法を工夫することが、さつまいものおいしさを引き出すことにつながります。

第3章|さつまいもの栄養を、子どもの食事やおやつに
さつまいもの魅力は、甘さやおいしさだけではありません。子どもの成長を支える栄養素も含まれています。
さつまいもに含まれる栄養素
さつまいもには、エネルギー源となる炭水化物のほか、食物繊維やビタミンCなどが含まれています[6]。
炭水化物は、体を動かしたり、日々の活動を支えたりするための大切なエネルギー源です。成長期の子どもにとっても、欠かせない栄養素の一つです。
食物繊維は、腸内環境や便通を整える働きに関わっています。
また、ビタミンCは、皮膚や骨などを支えるコラーゲンの生成に欠かせない栄養素です。また、食事に含まれる鉄の吸収を助ける働きもあります。
こうした栄養素を含むさつまいもは、ごはんや汁物、おかずなど、毎日の食事にも活用できます。
例えば、さつまいもごはんにすれば、ほくほくとした食感と甘みを楽しめます。ほかの野菜と組み合わせた汁物やポタージュにするのもよいでしょう。
離乳食や幼児食のおやつにも
さつまいもは、子どもの食事だけでなく、おやつにも取り入れやすい食材です。
やわらかく加熱してつぶしたり、しっとりとした蒸しケーキや、なめらかなプリンにアレンジしたりと、さまざまな食べ方を楽しめます。
離乳食では、使用する材料や子どもの食べる力に合わせて、硬さや水分量を調整することが大切です。特に、さつまいもは口の中でまとまって飲み込みにくくなる場合もあるため、パサつきや一口の大きさにも気を配りましょう。
また、離乳食完了期から幼児期にかけては、おやつが食事で補いきれないエネルギーや栄養を補う「補食」としての役割も担います[7]。
さつまいもの甘みを生かした一品を、いつもの食事やおやつに加えてみてはいかがでしょうか。
おわりに|いつもの食材に、新しい発見を
焼きいもの甘さの秘密は、さつまいもに含まれるでんぷんと酵素、そして加熱の仕方にありました。
普段何気なく行っている「焼く」「ゆでる」「煮る」という調理にも、食材のおいしさを引き出す理由があります。
「いつもの食材も、調理の仕方を少し工夫することで、おいしさの引き出し方が変わる。」
そんな気づきを、この記事を通して少しでもお届けできたら幸いです。
参考文献
[1] 農畜産業振興機構.「『さつまいもの日(10月13日)』にちなんだ講演会の開催について」.2013年.
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho08_000362.html
[2] 片山健二.「『焼き芋』の甘さの秘密」.化学と教育.2019年;67巻7号:318–319.
https://doi.org/10.20665/kakyoshi.67.7_318
[3] 農業・食品産業技術総合研究機構.「低温糊化でん粉を含むサツマイモ『クイックスイート』のマルトース生成メカニズム」.2015年.
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nics/2015/nics15_s07.html
[4] 福岡市.「さつまいもを知って、おいしく食べよう!」.2024年.
https://www.city.fukuoka.lg.jp/nosui/seisakukikaku/life/documents/R6-2_oyakosyokutonounotaikenkyousitu_satumaimo_recipe.pdf
[5] ツヴィリング J.A. ヘンケルス ジャパン.「蒸し器でさつまいもの美味しさを引き出す蒸し方!甘さアップのコツ」.2025年.
https://www.zwilling.com/jp/magazine/cook-and-create/steamed-sweet-potato.html
[6] 文部科学省.「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」.2023年.食品成分データベース「さつまいも/塊根/皮つき/蒸し」.
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02046_7
[7] 「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会.「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」.2019年.
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/junyuu

